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十九回目ゲスト 宮藤官九郎
さん(KANKURO KUDO)
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その日は2003年いちばんの冷え込みで、
外はまともに立っていられないほどの北風。
お昼少し前、地下の薄暗い談話室に入り、
二人は挨拶を交わして、椅子に腰掛けた。
私はもうすこし豪華な感じの場所を用意したつもりだったのだが、
電話予約だけで現場を確認しなかったのがよろしくなかった。
びっくりするほどその部屋は薄暗く、ボロく、
びっくりするほど店員はそっけなく、
入り口のレジカウンターには常時、誰も居ない。
呼んでもぜんぜん来やしない。
こんな貧乏くさい場所に、
「この人達、今、いったいいくら稼ぎ出しているんだろうか…」
という男二人が、 普っ通〜の表情をしてちんまりと座っているのは、
なんだかとてもけったいで、ちょっとかわいらしい感じがした。
ヒミツっぽいと言えばヒミツっぽいのだが、
どうにもこうにもボロくさくて不完全な雰囲気が、
初対面の二人の緊張をほぐしていたようだった。
見た目、それは不思議な現場だったけど、居心地はとてもよかったのだ。
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| 高須 |
宮藤くんって凄いな〜って最初に思ったのは
板尾さんの芝居の時なんだけど…。
倉本さんと3人でやってたよね? |
| 宮藤 |
3年くらい前に、板尾さんと舞台でご一緒したんですよ。
『王将』っていう舞台で、名古屋とか大阪とかも
ハイエースに乗って旅してしばらく回ったんですけど、
終わってからはまったく連絡取ってなかったんです。 |
| 宮藤 |
僕は教えたんですけど、板尾さんの番号は教わらなかったんですよね。
何故だったんでしょうか…(笑)。
だいぶ経ってから、ある日板尾さんから電話がかかってきて、
ちょっと相談があるんで…という流れで
独り舞台のお話になりまして。
それで、倉本さんとかも紹介していただいたんですけど。 |
| 高須 |
なるほどなるほど〜。
もちろん名前は前から知ってたけど
僕がちゃんと宮藤官九郎という人を認識したのは、そこからで。
今は歳、いくつなんですか? |
| 宮藤 |
はい、全然食えてない劇団の頃に、もう結婚してまして。
24歳の時ですね。 |
| 高須 |
もともとどうしてこの業界に入ろうと思ったの?? |
| 宮藤 |
たけしさんのラジオをすごくよく聴いてたんです。
それで、高田文夫さんの存在を知って、
「あー、こういう仕事がしたいなぁ」と思うようになって…。
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| 宮藤 |
あの頃、ラジオを聴いてたリスナーってみんな弟子入りしたいとか、
そんな感じだったと思うんですよ。
僕もそのうちの一人で、たけしさんの側に行きたいけど、
でもどうしたら行けるのか分からなくて、
高田文夫さんみたいなポジションなら近くていいなぁと
憧れるようになって…。
後からそれが「放送作家になりたい」ってことなのかなぁと
思うようになったんですけど。 |
| 高須 |
放送作家ってどういう仕事か、その当時って分かってた? |
| 宮藤 |
いや、ぜんぜん!(笑)
知ってるのは高田文夫さんと景山民夫さんくらいで、
「この人達はずっと何をしてるんだろうなぁ」と思ってましたね。 |
| 高須 |
そうだよね。
コントとかおもしろいことは、タレント本人が考えてるもんやと
思ってたからね〜。
おもしろいことを考えるのも、やるのもタレント本人だとね。 |
| 宮藤 |
僕もそうでしたよ。ホントに。
で、とりあえず放送作家になりたいと思ってたら
そういう人達が多く出てる日大の芸術学部だ!
と思って、入学したんです。 |
| 高須 |
日大芸術学部いうたら、有名やんね。
音楽もやってるんでしょう?
音楽方面に進むつもりはなかったの? |
| 宮藤 |
軽音部に入って、いろいろやってたんですけど。
月日を重ねていくと
最終的には友達が一人しか居ないといった状況になりまして…(笑)。
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| 宮藤 |
そう、せっかく東京来たのにこのままじゃダメだなぁと。
それで演劇を積極的に見に行くようになって、
ワハハ本舗とかよく見たりして。
そのうち「ここ、おもしろいなぁ」って劇団見つけて、
手伝うようになったんですよ。
そこが、今所属してる『大人計画』ってところでして。
松尾スズキさんが書いてる台本もすごくおもしろかったので、
なんとなくそのままずっといるんですよ。 |
| 高須 |
ほぅほぅ。
でも劇団からテレビの放送作家って、近そうで実は遠いよね。 |
| 宮藤 |
それで『大人計画』の芝居を見に来てた放送作家の人が、
テレビの仕事を紹介してくれて…今に至ってたりするんですけど。 |
| 高須 |
あぁ! 爆笑問題とよく仕事してはる…。
たしか「タモリ倶楽部」もやってるよね。 |
| 高須 |
すごいねー。放送作家として一番最初の仕事はなんやったの? |
| 宮藤 |
最初の仕事は、TBSの深夜で『デカメロン』ですね。
竹中直人さんとスカパラと…。 |
| 高須 |
はいはい、知ってる知ってる!
あれやってたんや〜。 |
| 宮藤 |
ですね。そして、その後はジョビジョバの『さるしばい』かな。
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| 高須 |
おぉ、いい番組からスタートしてるなぁ…。
オレ、ジョビジョバの番組は、
当時番組のプロデューサーの徳光(フジテレビ)に
「高須さん、一緒にやりません?」って誘われたんだけど、
裏の番組がかぶっていたかなんかで、断ったんよ、それ。
ひょっとしたらその時に会ってたかもね。 |
| 宮藤 |
そんなことが(笑)。
『さるしばい』はたまたまジョビジョバと舞台をいっしょにやる機会があって、
で、声をかけてもらったんですけど。
そこで福原さんとか、松井さんと知り合って…。
ディレクターの伊藤さんともその時知り合ったんですよ。
で、伊藤さんにはその後、
「『笑う犬』やりませんかー?」と声をかけてもらって…。 |
| 高須 |
なっるほどなぁ〜。
最初、放送作家の仕事ってどうだった?
想像してたのと同じやった?違った? |
| 宮藤 |
僕、最初が『デカメロン』で、主演が竹中直人さんじゃないですか。
ゆるい…といったら言葉が違うけど、
良い意味で自由な感じの現場だったんですよ。
だから、コント書いていけば、素直にそれをやるって感じで
仕事としてはすごく分かりやすかったんです。
『さるしばい』もジョビジョバは知ってるから、
やりやすいところがあったし。
その後、『笑う子犬の生活』って、深夜時代の番組に参加したとき、
はじめて構成会議ってのに参加しまして。 |
| 宮藤 |
びっくりしましたね〜。朝まで会議ってのにまず驚いて。
感想としては…
「オレ…ずいぶん喋ってないな…」と(笑)。
今日一日ここにいるのに、全然しゃべれてないわけですよ。 |
| 宮藤 |
帰りにタクシーチケット渡されるんですけど、
それすらももう申し訳ないわけですよ。
「何にも喋ってないのに、タクシーで帰っていいの!?」みたいな(笑)。 |
| 高須 |
最初って絶対しゃべれないよ。分かるわ〜、それ。 |
| 宮藤 |
だけど、それも結構最近の話ですよ。
28ぐらいの時ですし。 |
| 高須 |
そっか…『子犬』時代っていうても、まだそんなくらいか…。
テレビの会議って変やもんなぁ。
途中から新人として参加するとなおさらやけど、
既に変な空気ってできあがってるやんか。 |
| 高須 |
なんか…中途半端な小ネタ乗っけて遊んでる〜みたいな(笑)。
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| 高須 |
あんなん入っていかれへんやん?
オレも若い頃、大阪で、だーれも知り合いの居ない会議に
放り込まれた時、会議室の端っこで全然話にはいっていけなかったのよ。 |
| 高須 |
ほいで、先輩の作家達の話してることが、
これまた全然おもしろくなくて、会議のノリや冗談が理解できないわけ。
「意外におもしろくねぇな〜、テレビの放送作家って」(笑)
心の中で思ってたなぁ。 |
| 高須 |
『4時ですよ〜だ』とか、そんな頃かな。
松本と浜田から
「大阪で一番おもしろい人達を集めた会議やから!」
って言われて行ってみたら、そのおもしろさが分からない(笑)。
もう困る困る(笑)。
独特の空気に入っていけないから、余計に反発心持つしね〜。
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| 宮藤 |
僕は、最初に福原さんとか松井さんがいじってくれて助かりましたね。
今でもよくいじられるんですけど、
それがあってからやっと入っていけるようになりましたよ。 |
| 高須 |
そうそう、いじられると入りやすくなるよね、すぅっと。
でも、宮藤くんっていじられキャラやっけ?? |
| 宮藤 |
最近はそうでもないと思うんですけど、
最初の頃って必死じゃないですか。
だから、いじられてでも何でもいいから、
とにかくこの場に必要とされていたい、と思って…。
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| 宮藤 |
だから、いじられてからは気が楽になったというか、
安心しましたよ。
それまでは…なんていうんだろう…。 自分が不安になるんですよね。
とりあえず今ここで、この会議の場で、
他の人達がおもしろい話をしてる、というのは見ていて分かるんですよ。
分かるんですけど、乗っかっていけないんですよ。 |
| 宮藤 |
そういうおもしろさって、自分が参加してないと
つまんないじゃないですか? |
| 宮藤 |
だから、どうしたらいいんだろうってずっと悩んでて。
とりあえず、次の会議にも呼んでもらわなくちゃいけないから、
宿題だけはすごく頑張りました。
宿題だけは気合い入れてやって…それがよかったのか悪かったのか、
今までつながってるんですけど。
当時から、福原さんや松井さんには本当に良くしていただきました。 |
| 高須 |
福原が、何かって言うと「宮藤ちゃん、宮藤ちゃん」って
俺らに言うからさ〜、そういう経緯があったのかぁ、なるほど(笑)。
「宮藤ちゃん、宮藤ちゃん」って、さも後輩のように
軽い感じで言うから、俺らはびっくりするやん?
「えっ、なにそれ、今をときめく宮藤官九郎に、 なんでそんな感じなわけ?」
みたいな(笑)。 みんな、興味持つやん?
「えっ、なに、福原くんは宮藤くんと知り合いなの?」って言うしかない。
な〜んか、つながってる感をめちゃくちゃ出してくるんよね(笑)。 |
| 宮藤 |
いやもう、最初の頃からお世話になってますから(笑)。
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| 宮藤 |
でも、今でもやっぱり会議の最初はどんな風に入っていこうかな、とか
考えてしまいますよね、どうしても(笑)。
それを考えるのがおもしろいっていうのもあるんでしょうけど、
自分の後に、若手の作家さんが入ってきた時にはじめて分かる。
「オレは…こうだったんだなぁ」と(笑)。 |
| 高須 |
そそそそ!
絶対いてるよ。アホな小ネタふって、みんなでそれをいじくり回してる時に
「こいつらおもんないなぁ」みたいな顔で、こっちうかがってる若手(笑)。
そしたら、そいつがすっごい気になりだすのよ、オレ。
自分がそうだったから(笑)。 |
| 宮藤 |
それおもしろいっすねぇ(笑)。
自分がその立場に立ってみて、分かるんですよね。
別に先輩の自分たちも、新人の人達に
「入ってくるな」って言ってるわけじゃないんですよ。
そんなつもりは全然無い。無いけど…そうなっちゃう。
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| 高須 |
あれは永遠に続いていくんやろねぇ(笑)。
でも、どうやって食い込んでいこうかって考え続けるのは大事やわ。
いくつになっても「どんなネタから行こうかな…」って
オレも考えるもん。 |
| 宮藤 |
ですね、根本的にそうやって考えるのが好きなんでしょうね。
「どっからつかんでいこうかな…」とか(笑)。 |
| 高須 |
そのへんが作家の付き合いとしては、大事やね。
じゃないと、先輩や周りとつながっていけないから。 |
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